前回は、私が吹田の地でリウマチ・膠原病内科クリニックの開業を決意した理由をお話ししました。
今回はその過程で、今、私が最も頭を悩ませている『物件の立地選び』について、私の思考とこだわりをそのまま記録しておきたいと思います。
開業コンサルタントが勧める「1階」や「商業施設」という王道
物件探しを始めると、ありがたいことに様々な医療モールの情報が寄せられます。
その中で最も多く提案されるのが、「郊外の大型商業施設に併設された医療モール」や、「通りに面して目立つ、1階のテナント」です。
「買い物ついでに寄れるので、認知されやすいですよ」
「1階なら、前を通る人の目に留まるので集患に有利です」
確かに、風邪や急な体調不良の際にお世話になる「一般的な内科」や「小児科」など、地域の方々が日常的に、ふらっと利用する医療モデルであれば、これらの立地は素晴らしい正解だと思います。
私も最初は、患者さんに見つけてもらいやすい1階や商業施設が最適なのではないかと考えていました。
しかし、自分の専門であるリウマチ・膠原病の診療、環境、そしてそこへ通われる患者さんの動線を細かくシミュレーションしていくうちに、一つの大きな疑問が生まれました。
リウマチ診療だからこそ必要な「空間のゆとり」
現代のリウマチ治療は、医療の進歩によって生物学的製剤などの点滴療法が非常に高い効果を上げるようになりました。
その反面、治療には一定の時間がかかります。
また、関節の痛みが強く、足腰が不自由な患者様や、車椅子で来院される患者様も少なくありません。
もし、人通りの多さや目立ちやすさを重視して、一般的な広さの1階テナントや商業施設の一角に入った場合、どうしてもスペースに限りがあり、待合室は混雑しやすく、車椅子でのすれ違いが難しくなったり、点滴スペースで隣のベッドとの距離が近くなってしまったりします。
ただでさえ不安を抱えて来院される患者様に、そのような窮屈な思いをさせて良いのだろうか、と悩むようになりました。
クリニックという「ハコ」もまた、心と体を癒やすための大切な医療の一部ではないでしょうか。
そう考えたとき、私の中にひとつの新しい基準が芽生えました。
それは、他科とスペースを分け合って安心するような「目立つ1階」を探すのではなく、患者様のために「ゆったりとした広い物件を、たとえ上の階であってもワンフロア広く使い切る方が良いのではないか」という選択肢です。
費用は高くなる。けれど、その先にある理想の医療のために
当然ですが、駅近のビルでそれだけ広い物件を借りる、あるいは上の階を大きく使うとなれば、毎月の家賃などの固定費や初期費用は必然的に高くなります。
経営的なリスクを考えれば、最初は1階のコンパクトな広さで手堅く始めた方が正解なのかもしれません。
夜、ふとした瞬間に、その費用の重さに足がすくみそうになることもあります。
それでも、広い空間があるからこそ、車椅子の動線を完璧に確保できます。
ビルの上の階という落ち着いた「空中階」だからこそ、外の騒音や人目を気にせず、点滴室のプライバシーを静かに保つことができる。
そして、リウマチ・膠原病という「全身疾患」の合併症まで見落とさず評価するために、エコーなどの必要な検査設備をゆったりと配置し、院内でしっかりと診療が完結する環境を創ることができる。
費用が高くなったとしても、その分だけ、自分が理想とする「患者さんにとって本当に優しい医療」を妥協なく提供できるのではないか。
そんな想いと、経営的な現実の間で、今まさに激しく葛藤しています。
アクセスが良い駅近でありながら、商業施設や1階という「人通りの多さや目立ちやすさ」だけに頼るべきなのか。それとも、あえて上の階という落ち着いたフロアを広く使い切り、エレベーターを降りた瞬間から、静かで安心できる世界観を創り上げるべきなのか。
いま、まさにその両方の可能性を視野に入れながら、開業支援の方とも熱いディスカッションを重ね、物件の交渉やシミュレーションを行っている最中です。
まだ、何も決まってはいないからこそ
正直にお話しすると、まだ物件は何も確定していません。
これから賃料の交渉や、面積の調整、スケジュールのご相談など、乗り越えなければならないハードルは山積しています。
1階の安心感か、商業施設の利便性か、それとも上の階の広さとプライバシーか。
この葛藤がどう転び、最終的にどのような「器」を選ぶことになるのか。
そのリアルな結末も含めて、このドキュメンタリーで淡々と、正直に記録していきたいと思います。